はあ……。
しゅぴさん、どうしたんですの？
ため息なんかついていらして……。
いや、現実世界で問題が起きたんだ。
職場から帰る途中、眼鏡を忘れたことに気づいて、車を方向転換しようとあわててハンドルを切りながらバックしたら、ハンドルを切りすぎて道端の木に後ろからぶつかって、車のリアガラスを粉砕してしまったんだ。
これでは自分の車が使えないから、明日からの通勤は母に送り迎えしてもらうことになった。
まったく、母には迷惑をかけっぱなしだよ。
……それだけですの？
え？
そんなの、たいしたことありませんわ。田舎の車なんて、傷やへこみがあるのが大多数ですの。
まあ、他の車や人にぶつからないで済んだから、不幸中の幸いというものではありませんこと？
そんなあ。修理が必要なんだよ？お金かかるんだよ？
次の給料で新しいパソコンを買おうと思ってたのに～。
今の俺のマシンはXPだから、CoRがさわれないんだよお。
うるさいですわね。縛りますわよ？
あ、それならこちらからお願いしたいくらいです。
あら、わたくし、人間は食べませんけど、カラスくらいならちょうどいいお食事としていただきますわよ？
それでいい。君に砕かれ、君の一部となることができるのだから。
気色悪いですわね。
そういえば、あなたはそのカラスの体を借りているだけって、どこかで言ってましたわね？
つまり、わたくしがそのカラスを食べたところで、あなた自身は死ぬどころか痛くもかゆくもないということですわね。
それどころか、寄生虫みたいに伝染してわたくしの体を乗っ取ってしまうかもしれませんから、食べないことにしますわ。
寄生虫とは失礼な。ここでの俺は自分の体を持っていない霊体みたいなもので、誰かの体を借りるしかないんだ。
もちろん、俺は自分が本来いる世界ではちゃんとした自分の体を持っているんだけどね。