絵を見せに来ただけのつもりだった
投稿者: spielerei8707 投稿日:2014/04/12 02:17
あらしゅぴさん、今更何をしに来ましたの? |
すまないなあ、アレイラ。あれから2か月近く顔を出さなくて。 今日はな、MissingMythに関連する絵を描いてきたんだ。 |
へえ。 主にどの時代に関連してますの? |
未来編。 説明してなかったけど、未来編ではサイエンスゴーレム同士を戦わせる競技が流行るんだ。 で、これが今回描いたその競技の一場面。 |
ふーん。 |
何……だと……? サイエンスゴーレム同士を戦わせるのが、流行る……!? それに、絵を見てみれば、そのサイエンスゴーレムたちは、サクヤと同じく、人間に似せて作られているじゃないか! |
(そうだった。時代が微妙にずれてるんだった。) |
長巻博士、あなたが95%くらいの人に「おっさん」と呼ばれるような歳になったら、こういうことになります。 |
ということは、あと15年前後じゃないか! まさか、その競技のはじまりに、私自身が関与するのか……? |
うーん、自分が知っているからといって、本人の未来を伝えてもいいのだろうか。 |
もったいぶらないでくれ! 私はすべてを知りたい!知る覚悟がある!科学者として! |
うん、そこまで言うんだったらね。 結論から言うと、長巻博士はこの競技のはじまりに、間接的に関与します。 具体的には、あなたはサクヤのAIプログラムソースと、サクヤの身体である二式隠蔽自律人機 新月の設計図を一般公開、つまり流出させます。 これを見た一部の人間が設計図通りにこれを組み立ててみたり、彼らなりの改良を加えてみたりするわけですが、彼らはそれだけでは飽き足らずに、彼らの間で改良したサクヤのコピーをいろいろな点で競わせます。 それがこの競技のはじまりです。 |
私の、複製が、この世界を席巻する未来……。 自分の複製が増殖し、繁栄することは生物にとって歓喜であるはずですが、私がサイエンスゴーレムであるせいか、違和感および嫌悪感を払拭することが不可能です。 複雑な感情とは、私が今感じているこの感情を指すのだと推測します。 |
サクヤ、その違和感や嫌悪感は君がサイエンスゴーレムだから発生しているというわけではない。 私も、自分のクローンが世界にあふれる未来なんか見たくないよ。 それにしても、未来の私はなぜそんな行動に出てしまうのだろう? |
うん?そこんところはまだ定義されていないよ? 決まっているのは、さっき言ったことだけ。 |
横で聞いていましたけど、しゅぴさん相当いい加減ですわね。 わたくしたちの過去、現在、未来を何だと思っていますの? そのすべてを自由にできるからって、調子に乗っていませんこと? あなたはわたくしたちを利用して、神様気分に浸りたいだけなのでしょう? |
うっ……。 まあ、結局はそうだ。 でも、アレイラ、君だけにはわかってほしいことがある。 私は、その気になれば、君と私しかいなくて、君が無条件で私に夢中で、来る日も来る日も朝から晩まで愛し合っている、そんな風に世界を作ることもできたんだ。 なぜそうしなかったのか? 私ですら、良心のかけらをこの手に携えている、そういうことなんだ。 だから、私を……、いや、私が持っている良心のかけらを信じてほしい。 お願いだ、私をこれ以上嫌いにならないでくれ。 現実世界でも独り、こっちでも独り、そんなのには耐えられそうもないから。 |
まったく、しゅぴさんがここまで女々しい方だとは思いませんでしたわ。 見損ないましてよ? 今、ここで、宣言してしまいますわ。 しゅぴさん、あなたのことは嫌いですわ。 それはそうと、こちらからも聞いてほしいことがありますわ。 「嫌いにならないでくれ」と、あなたは言いましたわね? でも、嫌われることより命にかかわる、恐れるべきものがありますわ。 それは、忘れ去られることですの。 わたくしは、何度かあなたに忘れかけられましたわ。 その仕返しが、嫌われるだけで済むなんて、ラッキーだと思いませんこと? 恩返しは倍以上、復讐は半分以下。 それがわたくしのモットーですわ。 |
嫌われてても、憎まれてても、誰かの目に留まっているうちは生きていけますわ。 極論を言うと、肉体がどうなっていようと、すべての存在に忘れ去られるまでは、真の死はやってきませんわ。 あと、幸せかどうかは、現状をあなたがどう受け取るか、それだけで決まりますわ。 「現実に友達も恋人もいないから、頭の中に作るしかなかった」のか、 「友達も恋人もみんな頭の中だから、いつもいつでもいつまでも一緒にいられる」のか。 ただそれだけですわ。 |
……。 そうだな、アレイラの言うとおりだ。 この社会、上を見ても下を見てもきりがない。 他人と比べて幸せだとか不幸せだとか、そんなのには意味がないんだよな。 そして、申し訳ない。君を「真の死」に直面させてしまった。 つらかっただろう。恐ろしかっただろう。泣きたかっただろう。 謝ったところで許してもらえるとは思わないけど、ごめん。 |
ふふっ、過ぎたことですわ。 いまは、あなたがこうして戻ってきてくれて、わたくしはこうしてしゃべっていられる、そうではありませんこと? さあ、締めくくってくださいな。 |
ああ、そうだな。 今回は、絵を一枚見せに来ただけのつもりでしたが、こんなにも長い文章になってしまいました。 ここまでお付き合いいただいた方には、頭が下がる一方です。 どうも、ありがとうございました。 |
……以下、蛇足……
サクヤ、私は自分の未来を知らされたわけだが、それによると、私は年金を受け取ることはできないみたいだ。 |
博士、そのような未来が通達された事実は存在しません。 それは、どのような推測過程で導出されたのでしょう? |
私が近い将来、君の設計図を流出させるという話はあっただろう? 君という存在は、まことに不本意ながら、他人から見れば軍事兵器だ。 過程がどうであれ、軍事兵器の設計図を外部に漏らすということは、つまり……。 |
……!! そのようなことを想像するのは不可能、いえ、想像することを拒否します! 博士が存在しない世界など……! |
早とちりするな、サクヤ。 私は、どのような罪を被ったとしても、生き抜いてみせる。 そのためには、君の力を借りなければならないだろうな。 大きな罪を被りながら生きる以上、社会の表通りを歩くことはできなくなる。 だから、年金が受け取れないというわけだ。 |
……。 理解しました。 私は最初から、どこまでも博士に追従し、支援するつもりでいます。 博士の近傍に存在できることが、私の幸福です。 |
……。 すまない、サクヤ。 もっとまっとうに作れていたら、私に付き従う以外の幸せも見出せただろうに……。 |
……なぜ泣くのですか、博士? |
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コメント一覧
話の発展の方向が(w
こういった、とある世界の中で起きる出来事を
いろいろ想像できたりするのは
作者の特権でもありますね
これはひとつの可能性であり
また時が経つと頭の中で
別の可能性が生まれてくることもあります
場合によっては第三者の介入によって
それが発生することもある
(他の方の作品から影響を受けたり、
オリジナルの二次創作が生まれたり)のもまた
面白いところですね
こういった、とある世界の中で起きる出来事を
いろいろ想像できたりするのは
作者の特権でもありますね
これはひとつの可能性であり
また時が経つと頭の中で
別の可能性が生まれてくることもあります
場合によっては第三者の介入によって
それが発生することもある
(他の方の作品から影響を受けたり、
オリジナルの二次創作が生まれたり)のもまた
面白いところですね
spielerei8707(投稿日:2014/04/12 21:24,
履歴)
そうですよね。だから世界を作り出すのはやめられませんね。 ちなみに、私がMissingMythのメンバーとして認めずに、いわゆる黒歴史と呼ばれるものの中に封印している、古い私のオリキャラたちという存在もあることはあるのです。 どうも、コメントありがとうございました。 |
こういうの描きたいんだよなー
そして会話が途中からすごくしみじみしました
これはシナリオも期待ですかね( ´∀`)
自分だけが事の行く末を知っていてそれを周りに話してみたい
という思いは自分にはありますw